eSIMとは何か
eSIM(Embedded SIM)とは、スマートフォンやタブレットに内蔵された書き換え可能なSIMのことです。従来の物理SIMカード(nano SIMなど)のようにカードを差し替える必要がなく、通信事業者のプロファイル情報をオンラインでダウンロードするだけで回線を利用開始できます。物理的なカードの発行や配送が不要なため、申し込みから利用開始までの時間が大幅に短縮されるのが特徴です。
eSIMの技術規格はGSMA(世界移動体通信事業者協会)によって標準化されており、世界中の通信事業者がこの規格に基づいたサービスを提供しています。日本国内でもNTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンク、楽天モバイルの大手4キャリアすべてがeSIMに対応しており、MVNOでもIIJmioやmineoなど対応事業者が増えています。
eSIMの大きなメリットは、1台の端末で複数の回線を利用できる「デュアルSIM」機能です。例えば物理SIMに国内の通話用回線を入れ、eSIMに海外旅行先のデータ通信用回線を設定するといった使い方が可能です。回線の切り替えは端末の設定画面から数タップで行えるため、用途に応じて柔軟に回線を使い分けられます。また、物理SIMスロットを1つしか持たない端末でも、eSIMを活用することで実質的にデュアルSIM運用が実現します。
eSIM対応端末の確認方法
eSIMを利用するには、端末がeSIMに対応している必要があります。iPhoneの場合、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XR以降のモデルがeSIMに対応しています。iPhone 14のアメリカモデル以降では物理SIMスロットが廃止されeSIM専用となっているモデルもあります。自分のiPhoneがeSIM対応かどうかは「設定」アプリから「一般」、「情報」の順に進み、「利用できるSIM」の欄に「eSIM」の表示があるかで確認できます。
Android端末の場合はメーカーや機種によって対応状況が異なります。Google Pixelシリーズ(Pixel 4以降)、Samsung Galaxyシリーズ(Galaxy S20以降の多くのモデル)、AQUOS、Xperiaの一部モデルなどが対応しています。Androidの場合は「設定」から「ネットワークとインターネット」(または「接続」)に進み、「SIM」の項目でeSIMを追加するオプションが表示されるかで確認できます。端末メーカーの公式サイトで対応機種一覧を確認するのが最も確実です。
注意が必要なのは、キャリアで購入した端末にSIMロックがかかっている場合です。2021年10月以降に発売された端末は原則SIMロックフリーですが、それ以前の端末はSIMロック解除の手続きが必要になることがあります。SIMロックがかかった状態では他社のeSIMプロファイルをインストールできない場合があるため、事前にSIMロック解除の状態を確認し、必要に応じてキャリアのマイページや店舗でロック解除の手続きを行いましょう。
eSIMの設定手順
eSIMの設定は、通信事業者から提供されるQRコードを読み取る方法が最も一般的です。まず通信事業者の公式サイトやアプリからeSIMプランを申し込みます。申し込みが完了すると、QRコードがメールやマイページに表示されます。このQRコードにeSIMのプロファイル情報が含まれています。
iPhoneの場合、「設定」から「モバイル通信」に進み、「eSIMを追加」をタップします。「QRコードを使用」を選択し、カメラで通信事業者から提供されたQRコードを読み取ります。プロファイルのダウンロードが完了すると、回線に名前(「仕事用」「旅行用」など)を付けて管理できます。デフォルト回線の設定画面が表示されるので、通話とデータ通信それぞれにどの回線を使用するかを指定します。
Android端末の場合も手順は類似しています。「設定」から「ネットワークとインターネット」(または「接続」)に進み、「SIM」から「eSIMを追加」を選択します。QRコードの読み取り画面が表示されるので、提供されたQRコードをスキャンします。プロファイルのダウンロード完了後、回線名の設定やデフォルト回線の選択を行います。
設定完了後はWiFiをオフにして、eSIM回線でデータ通信ができるかテストしましょう。通信ができない場合は「モバイルデータ通信」がeSIM回線に切り替わっているか、APN設定が正しく入力されているかを確認してください。海外渡航用のeSIMの場合、渡航先に到着してから回線が有効になるプランもあるため、出発前に通信できなくても問題ないケースがあります。事業者の案内を確認した上で判断してください。
物理SIMとの使い分け
eSIMと物理SIMにはそれぞれ特徴があり、利用シーンに応じた使い分けが効果的です。物理SIMの最大のメリットは、端末間の移行が容易な点です。SIMカードを差し替えるだけで別の端末で同じ回線を利用できるため、端末の故障時や機種変更時にスムーズに移行できます。一方、eSIMは端末の再設定が必要になるため、移行にやや手間がかかります。
日常的な使い分けとして最も多いのは、物理SIMにメインの音声通話回線を設定し、eSIMにデータ通信専用の副回線を設定するパターンです。例えば、普段使いの大手キャリア回線を物理SIMで維持しつつ、格安SIMのデータプランをeSIMで追加することで、通信費を抑えながら十分なデータ容量を確保できます。月々の通信費を見直したい方には有効な手段です。
海外渡航時のeSIM活用も広まっています。渡航前にオンラインで海外用のeSIMプランを購入し、現地到着後にeSIM回線をオンにするだけで通信を開始できます。物理SIMは国内回線のまま維持できるため、帰国後にSIMを差し替える手間がありません。また、渡航先で物理SIMを購入する場合と比べて、店舗を探す必要がなく、言語の壁もないため、到着直後から確実にインターネット接続を確保できるメリットがあります。
注意点として、eSIMのプロファイルは削除すると再インストールが必要になる場合があります。一時的に回線を停止したい場合は、プロファイルを削除するのではなく、設定画面から回線をオフに切り替えるだけにしましょう。また、eSIMは端末ごとに紐づくため、端末の初期化や修理に出す前にはeSIMのプロファイル情報をバックアップできるか事業者に確認しておくことをおすすめします。